ピックアップ:「不確実性の時代」に対処する手がかり

ピックアップ:「不確実性の時代」に対処する手がかり

CULTIBASE編集部

2022.03.25/ 5min read

人々の価値観の多様化や急速な技術の発展などを背景として、社会全体の「不確実性」はますます増大していくことが予想されています。昨今のコロナ禍で多くの人が実感している通り、先行き不透明な状況はそれだけで個人のキャリア戦略から組織の経営戦略まで、さまざまな意思決定の場面において暗い影を落とし続けることになります。

私たちは、個人として、あるいは組織として、この不確実性の時代とどのように向き合うとよいのでしょうか。また、不確実性を忌避すべき対象とするのではなく、組織に良い意味で変化をもたらす呼び水とすることはできないのでしょうか。

今回の特集記事では、CULTIBASEで過去に実施されたイベントの内容をもとに、不確実と向き合う現代人にとって備えとなる知見を、個人・チーム・組織の3つの観点からお届けします。

個人が不確実性と向き合う手がかり

探究の戦略:ビジネスパーソンのキャリアを拡げる新しい学び方

変化の激しい時代、そして「人生100年時代」とも呼ばれる長寿化の時代を迎えるにあたり、組織論学者・リンダ・グラットンは、書籍『WORK SHIFT』や『LIFE SHIFT』の中で、ライフステージに応じた専門性を渡り歩くように習得し、キャリアを形成していくことが重要だと述べています。それはすなわち、社会人としてより深い学習(≒自分自身を変化させること)を生み出し続ける重要性が高まっていることも意味しています。

CULTIBASE編集長・安斎勇樹は、イベント「探究の戦略:ビジネスパーソンのキャリアを拡げる新しい学び方」の中で、そのような時代を迎える組織人に向けた学習とキャリアの実践論として、「探究」を取り入れた戦略を提唱しています。

安斎は探究を「物事の本質を明らかにしようとすること」とシンプルに定義した上で、以下の4点を戦略上のポイントとして掲げています。

探究の特徴
・問い(探究テーマ)を起点として、“T字型”に進む
・知識(理論・実践知)を手がかりとして前進する
・問いに対する仮説の実践を通して前進する
・問いに答えようとする過程で、新たな問いが生まれる

1つ目の項目の“T字型”とは、下記の図のような形で、自身の現在の専門性の深堀り(深化)と、新たな領域の発見(探索)を両立すること、いわゆる「両利き」の学び方を指しています。

こうした「両利き」の考え方は、もともとチャールズ・オライリーらによる書籍『両利きの経営』の内容に基づくものです。組織として「両利き」を実践し、個人レベルにおいても同様の学び方を推奨することで文化として根付かせること。そうした一貫した取り組みが、不確実性に強くしなやかな組織をつくっていくためには有効な手立てになり得るはずです。

自分自身や所属する組織にとって、今根ざしている「深化」のテーマは何か。また、これから広げていきたい「探索」のテーマは何か。そのような問いを起点に、探究的な学びのプロセスを通じて自身を変容させ続けることが、変化し続ける環境に適応する上では重要なのだと安斎は述べています。

講座の詳細を学びたい方は、ぜひ下記アーカイブ動画よりご覧ください。

「探究の戦略:ビジネスパーソンのキャリアを拡げる新しい学び方」のアーカイブ動画(フル)はこちら

また、こうした探究的な学習をキャリア戦略に活かすための考え方については、下記の記事でも解説しています。

▼「選択と集中」に代わるVUCA時代のキャリア戦略:「分散と修繕」による探究的アプローチ
https://www.cultibase.jp/articles/9884

「わからない」を楽しむための技法:VUCA時代の探究のあり方とは?

ビジネスにおいて不確実性、すなわち「わからなさ」は、多くの場合、意思決定の精度を下げる”不安要素”として語られます。しかし、未知なものに触れ、その謎を解き明かそうすることは、本来的にワクワクする活動でもあるはずです。そうした「わからなさ」と向き合う楽しさを、社会に生きる私たちが取り戻すためには、どのような姿勢や考え方が求められるのでしょうか。

2021年4月に開催したイベント「『わからない』を楽しむための技法:VUCA時代の探究のあり方を探る」では、ゲストとしてドミニク・チェンさん(早稲田大学文化構想学部准教授)にお越しいただき、「『わからなさ』を探究する楽しさをいかに捉え、生み出すのか」といった話題を中心にディスカッションを行いました。

チェン 何か身につけた方法論があったとしても、それ以外の世界の認識の仕方もあるんだということを相対的に知るということが大事だと思っていて。自分が向き合っている問いに対して、今自分にはその方法論しかないからとりあえず当ててみる。けれども、それで上手くいかないのであれば別の方法論があるはずだし、なんだったら新しい方法論も創れてしまうという感覚がすごく大事だと思うんですよね。

 

逆に言うと完璧な方法論なんて存在しないということに気づくこと、(中略)何かを神聖視してピュアな環境を作ろうとするのではなく、自分の中に雑多さを入り混んでくることを許容できるかどうかということが関わってくると思っています。

“わかりやすい結論”や”合理的な解決策”に安易に飛びつくのではなく、わからなかったものは一旦あえてわからないままにしておいて、その後自然とわかるようになっていく過程に目を向けることも重要ではないか。そのような時間をかけて気づきが醸成される体験について、ドミニクさんはイベントの中で「発酵」というキーワードを用いて表現し、忙しない現代にこそ大事にしたい概念として語っています。公開中のアーカイブ動画では、90分のイベントを通して「わからなさ」を楽しむための姿勢・態度について、重厚な議論が交わされています。

「『わからない』を楽しむための技法:VUCA時代の探究のあり方を探る」のアーカイブ動画(フル)はこちら

チームとして不確実性と向き合う手がかり

なぜ今「チームレジリエンス」が必須科目なのか?:個の力に頼らず、不確実性に対処するための方法論

「困難な状況に直面しても、挫折から立ち直り、前進し続けることができることや、それに必要な力」と定義されるレジリエンス。ストレス社会に対処するヒントを与えてくれる概念として、昨今注目を集めています。

また、レジリエンスは周囲の人や環境の力を借りることで、さらに高いレベルで獲得することが可能だとされています。先日開催されたイベント「なぜ今『チームレジリエンス』が必須科目なのか?:個の力に頼らず、不確実性に対処するための方法論」では、集団でレジリエンスを高め合うための理論について、編集長の安斎勇樹と、職場におけるレジリエンスを専門に研究する池田めぐみ(東京大学社会学研究所 助教/株式会社MIMIGURI Researcher)が講義を行いました。

また、講義の中で、安斎が職場のストレスの大小が決定づけられる主要な要因の一つに挙げているのが、「不確実性」です。人間の認知の仕組み上、大きなストレスと対峙した際、その根本的な原因である不確実性と向き合おうとするのではなく、対症療法的にまず目の前のストレスを軽減しようと試みる傾向があるとされています。しかし、個人の力では向き合うことの難しい職場内の不確実性も、チーム内で共有し、多角的に解釈すれば、解消の糸口を見出だせるかもしれません。講座では、集団がチームレジリエンスを発揮し、不確実性を乗り越えるためのプロセスとして次のようなステップが紹介されています。

レジリエンスは、自転車の乗り方などの身体知に近い概念であり、知ったからといってすぐに身につけられるものではありません。しかし、こうした概念の存在がチーム内で共有されているだけでも、個人が不確実性に起因した悩みや違和感を話しやすくなるはずです。講座では、そのような対話の土壌を育むヒントにもなりうる知見を、最新のレジリエンス研究に基づき解説しています。

「なぜ今『チームレジリエンス』が必須科目なのか?:個の力に頼らず、不確実性に対処するための方法論」のアーカイブ動画(フル)はこちら

組織として不確実性と向き合うための手がかり

エグゼクティブ・ファシリテーションとは何か?:不確実性と向き合う経営チームのつくり方

組織全体の舵取りを担うエグゼクティブ層にとって、不確実性が高まる中でどのように意思決定を行っていくかは、経営に直接的に関わる重要な問題です。常に5年後・10年後を見据えるエグゼクティブ層は、マネージャー層や現場層とは異なる視座で思考し、判断をしなくてはいけません。そのため対話的なコミュニケーションが不足していると、「周囲に話しても理解されない」「自分でやるしかない」と孤立した立場に陥ってしまいがちです。

エグゼクティブ層の一人ひとりがそのような“鎧”を着込んでしまわないためにも、経営チームに必要な対話を促すファシリテーターの存在が重要となります。CULTIBASEではそのような経営チームを対象としたファシリテーションを「エグゼクティブ・ファシリテーション」と名付け、実践知を紐解いています。

ミナベ エグゼクティブ・ファシリテーションの何が一番難しいかというと、”鎧”を剥ぐところが一番難しくて。多くの経営者が”鎧”を自ら剥ごうとして、失敗をした体験をしているんですよね。外的な不確実性を処理しようと、他の人に権限移譲をしてみたけれど、失敗して最終的に自分で引き取ってしまったとか、内的な不確実性を処理しようと内部メンバーに自己開示をしてみたけれど、ちょっと相手にとって重すぎたのか受容されず、結果的に自分でなんとかするしかないと開き直ってしまったとか…。そのような体験による学習の結果として、“鎧”をより強固に着込んでしまうことがあるんですよね。

 

なので、エグゼクティブ・ファシリテーションでは、まずはそれらをアンラーニングすることで、他者への不信感を解消する必要があります。(中略)ファシリテーターが安易に叱責やフィードバックをすると逆に鎧を強化してしまうことがあるため、慎重にやらなくてはいけません。外的な不確実性と内的な不確実性の両方を組み合わせながら、発達の過程を適切に辿り、熟達できるように、支援していく必要があると考えています。

「エグゼクティブ・ファシリテーションとは何か?:不確実性と向き合う経営チームのつくり方」のアーカイブ動画(フル)はこちら

不確実性の中で生じる「葛藤」を起点とした創造的な組織づくり

立場や状況に関わらず、不確実性の中での意思決定は常に葛藤を伴います。しかしながら、葛藤は新しい何かに挑戦しているからこそ生じるもの。次の記事でも述べられているように、一見ネガティブな葛藤という感情を創造性の種として捉え、共有し、育む土壌があるのならば、個人・チーム・組織のどの層であっても、不確実性を過度に恐れることはないはずです。

「葛藤」を「創造性」に変える組織づくりについては、ぜひ下記の記事をご覧ください。

最新版「Creative Cultivation Model(CCM)」とは:組織の創造性をマネジメントするための見取り図

社会全体で高まる不確実性に抑圧されてしまうのか、それとも学習や創造性に活かすのか。今回の特集記事では、その岐路となる現代を生きる私たちにとって備えとなるような知見を紹介しました。ぜひ今回の内容を手がかりに、自分や組織の不確実性との向き合い方について、考えを巡らせてみてはいかがでしょうか?


会員制オンラインプログラム『CULTIBASE Lab』では、今回紹介したもののほかにも、「不確実性」との向き合い方をテーマとした下記のイベントのアーカイブ動画を公開中です。10日間の無料トライアル期間も設けておりますので、関心のある方はぜひこの機会に入会をご検討ください。

不確実性を乗り越えるチームづくりの流儀:高速な仮説検証を実現する「2つのDX」とは何か(ゲスト・広木大地さん)

https://www.cultibase.jp/videos/7508

▼職場の創造性を高めるルールのデザイン(ゲスト・水野佑さん)

https://www.cultibase.jp/videos/7669

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