スキルの深化とキャリアの探索を両立させるには?:多様化による「人材の矛盾」に向き合うヒント

スキルの深化とキャリアの探索を両立させるには?:多様化による「人材の矛盾」に向き合うヒント

CULTIBASE編集部

2022.08.17/ 6min read

働き方やライフプランが多様化する現代、組織における人材との向き合い方も大きく変化しています。「メンバーの一人ひとりがやりがいや充足感を感じながら働けているか」や「それぞれのポテンシャルに対して適切な配置ができているだろうか」など、日々人と向き合うなかで、マネージャーの悩みは尽きることはありません。

こうした価値観の多様化に対処するためには、メンバーの一人ひとりが何にやりがいを感じているのか、あるいは今後どのような業務で何を成し遂げたいのかなどを細かくキャッチアップし、組織の動きと紐付けながら支援していく必要があります。また、そのための施策として、昨今では1on1などの施策を設ける企業が増えてきています。

しかしながら、1on1のような施策は確かに高い効果が見込まれるものの、多くのリソースを必要とします。目の前の事業に懸命に取り組みながらそのリソースを捻出することは容易ではありません。また、仮に1on1でメンバーの将来のビジョンを聞けたとしても、今取り組んでいる業務がそのビジョンに沿うものであるとは限りません。メンバーの「今の業務で培っているスキル」と「未来に実現したいキャリア」がうまく繋がらず、時には相反するような状況に陥ってしまっていることも少なくありません。

組織やメンバーの今の状態に目を向けながら、同時にその取り組みが本当にメンバーにとって望ましい未来に繋がっているかを考慮し、調整する。このような難業を、株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO・ミナベトモミは先日開催されたライブイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」の中で、現代のマネージャーが抱えている「4つの矛盾」の一つに挙げ、「人材の矛盾」と名付けたうえで、その概要と紐解くためのキーワードを解説しました。

参考:現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?

本記事では、その解説の内容をもとに「人材の矛盾」の背景や向き合うためのヒントを紹介します。

その他の「4つの矛盾」に関する記事はこちら

現代マネジメントで求められる、「人材の矛盾」を乗り越える学習戦略

「多様化時代」とも呼ばれる現代、その人にとって望ましい働き方やライフプランは様々なのだという認識が浸透しつつあります。それまでは、多くの日本企業が誰でも年齢を重ねたら昇進し、賃金も上がっていくといった、年功序列を前提とした考え方や、それに応じたシステムが主流とされていました。

しかしながら、時代の流れとともに年功序列モデルは機能しなくなり始めています。近年では賃金の高さよりもやりがいを重視するなど、自身の価値観に合った働き方を選択する人が多く見られるようになりました。ただし、こうした変遷はまだ過渡期にあり、様々な歪みが生じています。例えば、以前のように所属組織から画一的なキャリアを押し付けられることはなくなったものの、敷かれていたレールがなくなり、目指すキャリアやロールモデルが多様化したことによって、どんなキャリアを選ぶことが”正解”なのかわからなくなってしまうこともその一つです。

「現在の矛盾」の記事の中でも述べましたが、人間は元来不確実性に弱く、そうした環境下では強いストレスを感じるもの。たとえ普段はキャリア形成にそれほど関心がなく、今が楽しければそれでよいと話すメンバーであっても、不安になったことがないわけではないはずです。そのような不安を軽減する意味でも、今の状況やスキル、能力を整理しながら、これからのキャリアについて対話的に語り合う機会を設けることは大切です。

そして、ひとまずどの山(目標)に登るのかを定めたら、次はそのビジョンに向けて何を学ぶ必要があるのかを一緒に考えてみましょう。必要な学びがある程度言語化できたら、その学びを日常の業務の中で得られるように業務内容や評価制度などをアップデートする。ただし、単に組み立てればよいわけではありません。また、ビジョンをガチガチに決めきってしまうのもよくありません。あくまで現時点でもっともよい未来を見据えながらも、必要に応じて方向転換する余地も残しておく”半身の姿勢”を意識するとよいでしょう。

まとめると、メンバーの「今の状態」と「未来のビジョン」に対する理解度を対話を通じて高めながら、「今」と「未来」の間にある溝にはしごをかけるように学習戦略を立てることが、現代のマネージャーには求められているのです。

営利企業である以上、「事業のために人材がある」という見方は欠かせません。一方で、「人が叶えたいことを叶えるために事業がある」という見方もまた、今後ますます重要になってくるはずです。

「人材の矛盾」と向き合うためのキーワード

それでは、メンバーの「今」と「未来」を結びつける学習戦略を立てるために、どのような概念が鍵となるのでしょうか。

キーワード(1):分散と修繕

キャリア戦略の王道ともいえる「選択と集中」ですが、変化が激しいVUCA時代においては、高いリスクを抱えてしまうことが指摘されています。CULTIBASEでは、「選択と集中」に代わる新たな戦略として「分散と修繕」と呼ばれる考え方を提唱。不確実性の時代の中で学習を軸にキャリアを拓く方法論として論じています。

キーワード(2):越境学習

自身が身につけている技術や価値観について、普段は意識することがなかったとしても、新たな職務や部門、別の組織に「越境」してみることで、その独自性に気がついたり、今までにない組み合わせによって新たな価値や気づきを生み出すことがあります。そのように自身のものの見方を広げたり、強みを再構築したりすることで、キャリアアップに繋げていくことができるでしょう。

キーワード(3):人的資本経営

2022年5月の経済産業省による「人材版伊藤レポート2.0」の公開の際にも大きな注目を集めた人的資本経営。レポートでも多様な個人の価値観に対応するキャリアラダーやポートフォリオを組織が用意・活用することが提案されています。

また、人的資源のマネジメントを取りまとめる役割として、「HRBP(HRビジネスパートナー・戦略人事)」の役割も重要です。詳しく学びたい方は、ぜひ下記の動画をご覧ください。

キーワード(4):学習環境デザイン論

目指すべきビジョンに向かって学習を深められるような環境が企業内にあるかどうかも、大きなポイントの一つです。メンバーの学習支援をコストではなく人的投資として捉え、メンバーのやりがいやライフプランと合致するように設計することや、それに応じて評価制度をアップデートすることが求められています。それらを包括した領域として、学習環境デザイン論が挙げられます。

その他にも、「ジョブ・クラフティング」や「リーダーシップ論」など、組織の中で人と向き合い、支援するための理論や方法論は、昨今数多く研究・実践されています。

それらを踏まえた上で個人の実践を通して探究し、探究の中で自身の未来へのイメージをクリアにしていくこと。それが多様化の時代・不確実性の時代におけるマネジメントの根幹と言えるでしょう。今回解説した人事のマネジメントのパラダイムシフトを踏まえた上で、ぜひ関心のあるキーワードから学び、実践してみてください。

今回は3つ目の矛盾として、「人材の矛盾」について解説しました。次回は4つ目の矛盾として「未来の矛盾」の概要とキーワードを紹介します。どうぞお楽しみに。


本記事は、会員制オンラインプログラム「CULTIBASE Lab」で開催されたイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」の内容を一部記事化したものです。90分におよぶイベントの模様は、下記のアーカイブ動画より全編ご視聴いただけます。

執筆:水波洸

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